書評や作品の感想

【感想】背筋(著)「近畿地方のある場所について」を読んだ。間違いなくここ数年でいちばん怖い本

見つけてくださってありがとうございます。

 

背筋さんの「近畿地方のある場所について」という本を読みました。

この本は、もともと「カクヨム」というWebサイトに連載されていた作品の書籍版となります。書籍化にあたって加筆修正されているとのことですから完全版といったところでしょうか。発売日は8月30日でしたが、僕の住んでいる地域の書店にまったく置いていなかったため実際に手にしたのは1か月後の9月下旬でした。とはいえWeb版を既に読んでおり内容はほとんど知っていましたので、早く読まなきゃという焦りはありませんでした。

今回はこの作品を読んだ僕の感想を書きますが重要なネタバレはありません。

ただ、この本の仕組み(ジャンル)については言及していますので、まったく無知の状態から楽しみたい方は先に作品を読むことをオススメします。

近畿地方のある場所について - カクヨム

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「近畿地方のある場所について」の内容

情報をお持ちの方はご連絡ください
近畿地方のある場所にまつわる怪談を集めるうちに、恐ろしい事実が浮かび上がってきました。

著者の背筋さんが、失踪した友人を探すために「近畿地方のある場所について」というタイトルの作品の発表を通して読者(我々)に情報提供を求めるという話です。

話の内容は大きく分けると2つ。ひとつは「近畿地方のある場所について」に関するさまざまな話。もうひとつは背筋さんと失踪した友人との会話。この2つが交錯しながら物語が進んでいきます。

短編エピソードが約20ほど掲載されています。それらは一見すると全く関係のない話に見えますが、実はすべて「近畿地方のある場所について」関係があります。ひとつひとつの話は1~10ページ程度と短いのでサクサク読み進めていくことができますし、1日1つの話を読んでも1か月あれば読み終えることができます。ですから読書が苦手な方でも楽しめますよ。ただしホラーが苦手だと読めないと思いますが。

感覚としては「洒落怖」などのスレッド形式でサクッと読める物語が近いですね。1つのエピソードは短いのですが続きが気になるので読書好き、ホラー好きであれば1日で読み終えてしまうと思います。

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「近畿地方のある場所について」の感想

さて、この本を読み終えた感想…というか読んでいる最中から感じていたことですが、怖い。

この作品、ジャンルとしてはモキュメンタリーになりますので、書いてあることは本当の話ではなく創作なんですよね。にもかかわらずとても怖いんですよ。約20のエピソードがあるんですけど「本当にこれは創作物なのか…?」と疑うほどリアリティのある話が次々と提供されます。

ホラー作品って小説にしても映像にしてもまあ怖いことは怖いんですけど、やっぱり創作だと思うと平気な部分がありますよね。映画リングは確かに怖いですけど(少なくとも僕は)映画だってわかってるから心の底から恐怖することはないです。また小説はホラーの表現が文字だけなので自分の頭の中で怖いイメージが創られていくぶん、映像作品より怖さがダイレクトに伝わってきて怖いと思うんです。それでもやっぱり創作物だから怖くなりきれないところがあります。

ところがこの本、あんまりリアリティのある書き方をするものだから創作だってわかっているのに現実の体験談を読んでいるような感覚になります。ゆえにいますぐにでもこの怪異が自分の身にも起こるのではないかという錯覚を起こします。そしたらもう怖いですよ。

作中でも特に「赤い女」に関する話が怖かったですね。それを知ってしまうだけで怪異が襲ってくるので逃げようがないというか、自分のところにも来るのではないかと恐ろしくなりました。

背筋さんの創る話をもっと読みたいと思いましたが、失踪した友人を探すためネットにこれを公開したという作風なので、同じペンネームで別作品を書けないのではと思いました。この作品の楽しみ方はWeb上にリアルタイムで毎週投稿されていく文章を読み進めていくという、一度限りしか使えない手法のような気はします。だからこそリアリティのある恐怖を演出できたとのだと思います。


さて「近畿地方のある場所について」という作品、カクヨムで読みさらに書籍化されたものも読んで簡単に感想を書きました。そしてこの作品は考察できそうな部分が多く存在していますので、もう一度じっくり読んで次は考察記事を書きたいと思います。他人の考察を読むのも好きなんですけど、まずは自分で考えてからにします。

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